その先を見てみたい2025-07-15 10:13:09

一月の残雪がようやく解け始めた頃、私は路地裏を血に飢えた獣の様に徘徊していた。 私は小一時間ほどで、野良猫を二匹拾ってきた 一つは幼体で、もう一つは成体になりかけていた それらの未来は明るいのだろうか。 もう事前に準備はしてあった、廉価のペットフードが数袋、段ボールで作られた簡素なトイレ、寝床は籠に毛布を被せただけ、簡易的な水飲み場も用意されている。 今日生きるのさえ必死だった、二匹には十二分といっていいだろう。 二匹を放つと興味深そうに家の中を見て回っていた。 此処は孤城だ。援軍のあてもなく。命の保証だけがある。だが、命は断ち切れない。 私は心でそう呟き床へ入った。期待に胸を 目覚まし無しに起きられたのはいつぶりだろうか、目覚めると日が昇り始めていた。 二匹はもう起きており警戒するような目でこちらを見ていた。 綺麗な瞳だった、抉り出したくなるほど黒く、光沢のある。二匹とも濁りは無かった。 私が二匹を捕まえた時の眼光とは全く違うだろう。本人でさえ言える本人だからこそ言える。 煤を被った納屋と新築のタワーマンションを比べているようなものだ。 天と地の差、雲泥万里、鯨と鰯だ。 餌をやり水をついでやった。 二匹の旨そうに飲み食いする様は、哀れだった。 一通り世話をした後私も早めの朝ご飯を食べた。 私がやりたいことは幸福の先を見ることだ、人間は楽な道を辿ろうとする。そうし続けた結果がいわば引きこもりや、ニートだろう。 ただ、それではつまらない、それをやり続けたらどうなるのだろう?野性味あふれる動物だとどうなるのだろう? 目は濁るのだろうか、狂うのだろうか、もしも死ねるなら二匹は死ぬのだろうか、二匹は幸せなのだろうか。 私はその先を見てみたい。

—— 海月